2008年7月12日
薄根川川場谷途中撤退
・・・おろくさんにお会いしてしまいました



この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)
及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平19総使、第184号)


道の駅川場田園プラザ0523〜0550川場スキー場に車デポ〜0610林間広場キャンプ場0635入渓〜06554m滝〜0700ウナギの寝床〜07104m2条滝〜0716大きなナメ〜0820獅子の牢〜1101遭難者発見〜1115下山開始〜1414獅子の牢〜1545林間広場キャンプ場



何度も山に行っているといろいろなことに出くわすものだ。

今回は、薄根川川場谷に沢仲間と行くことにした。
11日、スコールの合間を縫って高速道路を走り、6人が深夜の道の駅に集合して仮眠をとった。

翌朝、下山場所である川場スキー場に車をデポして、入渓点である林間キャンプ場に向かった。キャンプ場事務所の管理人さんに挨拶をして登山届を提出した後、沢装備を整えいよいよ出発。

入渓してみると、水の量が多い。ネットで調べた状態とだいぶ差があるようだ。昨日の大雨のせいか。難無く越えられそうに考えていた小滝が、ひょんぐる程に水を噴き出している。本来なら巻かなくて良いような部分もひたすら巻かざるを得ない。それでも、腰までつかりながら幾つかの滝を越えることが出来た。

最初の4m滝を左から巻くとすぐ上にウナギの寝床と呼ばれるくねったゴルジュが現れる。


最初の4m滝


ウナギの寝床

更に進んで4m2状の滝を右から巻くと平滑と呼ばれる川幅一杯に広がる大きなナメに出会う。素晴らしい眺め。霧が流れてきて幻想的な雰囲気を醸し出していた。


ナメを歩くと・・・


2条4mの滝


その上は平滑


ナメを更に進む

この先は、岩と小滝を越えたり巻いたり岩の隙間を潜ったりと、いろいろな方法を経験しながら遡って行く。

急に両岸が迫ってきたと思ったら、獅子の牢に到着。くの字に曲がった深いゴルジュは両側から覆い被さって不気味な雰囲気。奥の滝の釜は深いが、右側の少し被っているがホールド豊富なルートを使って越える。


淵を渡る




獅子の牢に到着


獅子の牢を上から見下ろす

この先は更に大きな岩が重なって形成しているロックガーデンのような小滝などを越えながら進む。
途中で黒いリュックを見つけたが中身は空っぽ。なんだか気味が悪い。







11時。少し開けた場所に出た。その先の滝に向かおうと足を踏み出そうとすると、先頭が血相を変えて後ろを振り返り、女性は来るなと声をかけている。目の前に引っかかっている流木の向こうにおろくさんがいるということだ。遭難者は仰向けの裸で上半身は岩の隙間に隠れている。ちなみに、「おろく」という言葉は「南無阿弥陀仏」の唱えが六字であることからそう呼ぶそうだ。

少し戻ってみんなで相談。折角来たのだからという気持ちはあったが、すぐに沢を下って届け出ることにした。一応現場の写真を撮影し下り始める。



中央の石裏側の流木の向こうに遭難者が横たわっている

途中で半ば砂に埋まったデジカメを発見。持って降りることにする。先程発見したザックは持ち帰らず写真を撮った後、流されないよう川岸の枝にくくりつけた。

途中で遡行してくる若者に出会う。状況を説明したところ、悩んでしまったようだ。とりあえず私達は更に下った。暫くすると先程の若者たちが遡行を中止して下ってきた。若者だけに足が速い。先行して下ってもらうことにした。

気持ちが暗く、持ってきた荷物は重い。さっきは難無く登れた滝がなかなか下れない。時折ロープを出しながら慎重に下ってゆく。
ようやくキャンプ場に到着したのは15時半を過ぎていた。


獅子の牢にロープを張って下る
午後になると陽が入りそんなに恐ろしくない


平滑を下る


先程のパーティーが連絡してくれていたようで、着替えている間に警察から連絡があった。警察の方に自分の身元と発見位置のGPSデータなどを連絡した。
今から現場まで案内して欲しいと言われたが、沢登りが必要であり、夜間は無理だし明日にといわれても疲労と技術的な問題で勘弁して欲しい旨を伝えると、とりあえずこちらに向かうとのことだった。
この間にデポした車を引き取りに行く。

警察の方が来られて、該当しそうな不明人がいると言うことが判り、落ち着いたら署のほうに来て状況を説明して欲しいとの依頼を受けた。とりあえず沢帰りなので入浴させていただいてからお伺いする旨了解いただき別れる。
ちなみに、帰宅後検索した情報はこちら。


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ニュース24時:群馬で山岳遭難か /埼玉

 20日午前7時40分ごろ、さいたま市の男性会社員(60)が群馬県川場村の武尊(ほたか)山に18日朝から登ったが、下山しないと家族が届け出た。県警ヘリが出動したが見つからず、21日も捜索を続ける。男性は18日未明に自宅を出発。同日午後7時ごろ、家族に「山で野宿する」と連絡したが、それ以降、電話がつながらなくなった。男性は白い野球帽、赤いチェックの長袖シャツに青色ズボン姿だった。
(群馬県警沼田署)

毎日新聞 2008年5月21日 地方版

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川場温泉センターで入浴(入浴料は7月から400円に値上げされていた。)した後、警察署に向かった。18時過ぎに到着し、応接室に案内され状況を説明した。回収したデジカメのメモリーカードは読み出すことが出来たそうで、先程話のあった不明者のものに間違いないそうだ。撮影した写真のデータを渡したが、あとでA4に拡大したものを皆に思いっきり見せられ改めてぞっとする。ようやく開放されたのは20時すぎ。協力金として一人あたり500円、計3000円也を頂いた。

この後6人で相談。心身ともにすっかり疲れ果て、運転担当者はとても帰れる状態ではない。昨日仮眠した道の駅に戻り再び仮眠をとって明日帰宅することとした。
途中で食料を調達し、道の駅で遅い夕食とお清めの酒を少しばかり入れてからシュラフの中に入った。

翌日は5時前に起床。本当ならば渓中泊で使う予定だった食材でおじやを作り朝食とした後現地解散となった。

ということで、今回の山行は途中撤退(敗退ではない!)となってしまったが、不明者を発見できたということでそれなりに有意義ではあたっと思う。
また、私達自身も、単独行の際の危険性について改めて身に染みた。これからも更に注意して行きたいと思う。

最後に、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。