2009年8月1日
ユーシン〜蛭ヶ岳
霧と夜の山歩きは気をつけよう


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0735寄バス停0740〜1000雨山峠〜1105ユーシンロッジ〜1355臼ヶ岳〜1530蛭ヶ岳〜1705丹沢山〜1800塔ノ岳1820〜2030大倉


 このところ沢にばかり行っている為、まとまって歩いていない。更に雨で行き渋り間隔が空いている。ということで、少しまとまって歩いてみようと丹沢の地図を広げた。長距離を歩くといえば、丹沢三峰から丹沢山経由で大倉までのコース、西野々から大倉に抜ける丹沢主脈コース、西丹沢自然教室から檜洞丸経由で大倉に抜ける丹沢主稜コースなどが考えられるが、歩いたことのある径ばかりではおもしろくないので、ユーシンから蛭ヶ岳に登るバリエーションコースを絡ませて歩くことにした。私の体力では明るいうちに完歩するのは難しいので、大倉尾根を最後に歩くようにした。

 新松田から寄行きのバスは数人の乗客があったが、246号から曲がる交差点で私以外は皆降車してしまい、あとは一人きり。途中から霧雨になってきた。バスを降りると雨はたいしたことなく、ザックカバーだけかけて歩き始める。

 寄沢はいつになく増水している。徒渉の際は水中の岩をあてにして素早く渡る。三度目の徒渉で失敗。左足を滑らせ両足ともドボン。靴の中まで濡れてしまった。靴下が湿っぽいのを我慢しながら更に進み、寄コシバ沢へ。いつもならほとんど水がないのに、今は立派な沢となり多段の滝を見せていた。雨山峠のすぐ手前の単管鋼製階段は途中のパイプのほとんどが外れてしまいクランプ一個で何とかつながっている状態。早急に修理しないと崩壊の危険がある。これが無くなると雨山峠に登るのに巻道を探す必要があるし、登山者が使っている最中に崩壊したら一大事だ。

 雨山峠までたどり着き、雨山沢を下る。苔生した木橋は雨に濡れてとても滑りやすい。手摺のない橋を渡るときには、一歩一歩足の置き場所を確認し前後左右に擦って動かないことを確認してから進む。それでも不用意に荷重バランスを崩すとズリッと滑りヒヤッとする。漸く玄倉林道に辿り着いたときにはほっとした。


最初の鎖場


寄コシバ沢荷は多段の滝が現れている


雨山峠手前の階段は壊れかかっている


雨山沢のナメ

 林道を少し歩きユーシンロッジに到着。一部開放してある避難部屋を覘く。電気も来ていて照明が点く。二室ある寝室のうち手前の一室は漏水のためか床材がはがされていた。奥の一部屋は多少かび臭いものの布団も用意されており、万が一の際には十分に役立ちそう。廊下を挟んで反対側の自炊室はゴミ一つ無く、まるで昨日誰かが使ったようにとても綺麗に整備されている。蛇口から水も出る。沢水のはずなので、使うときには十分に流してから使う必要があるだろう。

 さて、これから臼ヶ岳の尾根に取り付く。どこから登るか判らない。まずは裏の山神様にご挨拶する。するとその奥に明治薬科大学の山荘があり、その左側に小径が続いている。これだと思い辿って行くが、沢沿いに進むばかりでなかなか登らない。そのうちポンプ小屋に辿り着き径はなくなってしまった。しまったと思い、目の前の尾根を無理矢理登る。すぐに小径が見つかりそれを辿る。この径は崩壊が進んでおり、沢を横切る際には径が崩壊した跡のザレを、足下が崩れたら下の沢まで滑落だろうなとドキドキしながら、靴のコバを立ててそっと進む。そんなことを何回か繰り返していると先に滝が見えてきた。ここであわてて地図を取り出し現在地を推測する。このまま行ってもユーシン沢に沿って危険な高巻きを繰り返すだけで尾根にあがれない。かといって今来た径を無事に戻れる自信はない。斜面も急な上に木がまばらで、登るにしてもすぐ上の木に手が届きそうもない。仕方なく若干岩が露出している小さな沢をよじ登ることにした。詰まった泥をかき分け浮き石を除けて岩を露出させて足がかりとして行く。50mほど登り、これ以上登り切れなくなったところで岩面をトラバースし尾根筋の樹につかまる。そのあとは手に届く範囲の木を頼りに少しずつ高度を稼いで行く。右側に植林地が見えてきたので、あそこに辿りつけば大丈夫だろうと少しずつトラバース。漸くまっすぐ立てる斜面に辿り着く。そのまままっすぐ登ると主尾根に到着。しっかり踏み跡が付いていた。いったいどこから取り付けば良かったのだろう。本日の過半の体力はここで消耗してしまったようだ。


ユーシンロッジ


避難所の寝室

避難所の自炊場


ロッジ裏の山の神様


明治薬科大学の小屋


ユーシン沢の滝に出てしまった

 ここからは楽しい尾根歩き。ブナの森を楽しむ。大きなブナ達の間に幹廻り10cmほどの若木達が育っている。健康なブナの森の証明であり、とてもうれしかった。臼ヶ岳への最後の登りは結構な急登。さっきの崖登り事件で消耗したのか息があがり、なかなか足が前に出ない。必死になって樹木を掴み身体を引き上げると、霧が集まった滴が降ってきてオーバーヒートしている身体を冷やしてくれる。漸く登り切れば今度はアザミの群落が続く。葉のとげが刺さりとても痛い。痛みに涙が出そうになった頃、登山道に辿り着いた。


何とか踏み跡のある尾根に乗った


素晴らしいブナの森


倒木と巨樹と若木


キノコがあちこちに

 ここから蛭ヶ岳に向かう。霧が深く、最初の下りで径迷い。歩いていると径が薄くなりいつの間にか消えてしまった。周囲を見回しながら登り返し、何とか登山道に戻ることが出来た。蛭ヶ岳に到着したのは15時半。大倉尾根はヘッドランプ使用だなと覚悟して更に進む。不動ノ峰、丹沢山、塔ノ岳と進む。霧の中、笹原を歩く。風に吹かれると火照ったからだが冷やされてとても気持ちがいい。


蛭ヶ岳到着は15時半


鬼ヶ岩


霧の笹原は気持ちがいい


丹沢山到着は17時


塔ノ岳到着は18時


お久しぶりの丹沢太郎君

 塔ノ岳到着が18時。まだ明るいが途中で真っ暗になることだろう。腹ごしらえをしてヘッドランプを首にぶら下げダブルストックを取り出して下り始める。天神平を過ぎる頃暗くなってきた。ヘッドランプを装着し再び歩き始める。いつも通っている何でもない登山道なのだが、霧と自分の息とで目の前にフィルターがかかったようになって見にくいうえ、足下が平板に見えて甚だ歩きづらい。途中の山小屋では暖かい灯りの中で宿泊者達が談笑している姿が見える。その脇をLEDの冷たい光を発しながら下るのはとても寂しかった。途中で堀山の家へ歩荷する方とすれ違う。私のことを心配してくださり、ライトは頭から照らすのではなく腰のあたりから横に照らすと歩きやすいと教えていただく。ダブルストックをやめ、片手にライト片手にストックで歩いてみる。すると、今まで霧が反射して見えづらかった景色がクリアになった上、地面の凹凸がはっきり判り、更に光が遠くまで広範囲に届くのできわめて歩きやすい。歩くスピードも上がり、20時半に大倉に到着。バスの最終便まであと8分だった。危なかった。店はみんな閉まっており、ビールの自販機も無い。バスの乗客は大倉まで私一人だった。

 歩いた距離は28km歩行時間は12時間半。
歩いている途中であった人は、蛭ヶ岳山荘のご主人と塔ノ岳でテントを張っていた!若者、堀山の歩荷の方の3人だけ。景色は楽しめなかったが、この時期では考えられない涼しさで、トレーニングには丁度良かった。
そして、霧の中や夜間でのルートファインディングの難しさを学んだ。慣れた登山道でこれだけ大変なのだから、初めての道ではよほど慎重な行動が大切だと実感した。まずは、暗くならないうちに到着する、余裕ある行程を組むことが大切なのだろう。



ここからは今回観察した花たち


ネムノキ
寄沢沿いに沢山あった


コマツナギ


オカトラノオ


ヤマユリ


イワタバコ


イアタバコ


ヒトツバショウマ


トリアシショウマ


オトギリソウ


タマアジサイ


シモツケソウ


ノリウツギ


シロヨメナ


マルバタケブキ


ウスユキソウ


ヤハズハハコ


ミヤマオダマキ