2010年3月20日〜21日
九重
強風にもめげずに



20100320

牧ノ戸峠0940…1002沓掛山…1100星生山…1133久住別れ…1140途中撤退…1143久住別れ…北千里浜…1250法華院温泉

20100321

法華院温泉0528…0550鉾立峠…0640白口岳…0707稲星山…0737中岳…0750天狗ヶ城…0823久住山…0845久住別れ避難小屋0900…北千里浜…0936諏蛾守越…1036長者原




今回は、また大分に出張。
金曜に仕事は終わるので、土曜日・日曜日と九重に登ることにした。





20100320



牧ノ戸峠0940…1002沓掛山…1100星生山…1133久住別れ…1140途中撤退…1143久住別れ…北千里浜…1250法華院温泉

 天気予報は風強く午後から嵐。別府を出たときにはいい天気だったが、時間がたつにつれ雲が増えその動きもどんどん早まる。上空は相当風が強そうだ。
 牧ノ戸峠まで送ってもらい、いよいよ登山開始。最初はコンクリート舗装された道。味気ないが路面の保護には効果有り。沓掛山を過ぎると霧が出てきた。目の前にあるはずの星生山が見えない。地図にある星生山への登り口を進むが踏み跡地度で途中で下りになる。この先を登り返して登るはずなのだが何しろ前が見えなく不安になり、万一作業道等であると引き返す際に迷う可能性も考えられ、あきらめて正規の登山道に戻る。
 星生山をあきらめようと思って更に歩くと、なんと星生山への道標があるではないか。西千里浜中央にある経路だ。今はこちらの方がメインなのだろう。先の見えない霧の中を進む。だんだん風が強くなる。風にあおられても滑落しないように出来るだけ尾根の風上側を歩く。尾根に乗った途端、強風に叩かれ転倒する。その後は風の音を聞きながら早めに耐風姿勢をとるようにして、何とか星生山頂上に到着。


牧ノ戸峠の登山道を出発


星生山に到着
周りは何も見えない


星生山が霧に隠れて行く

 その先は崖になっている。先が見えないので非常に不安になる。それでも目をこらしてよく見ると、微かな踏み跡とアイゼン痕が残っている。径は風下側の岩場に付いている様だ。入山前に読んだ本では、三点支持さえ守ればそれほど危険な場所ではないと書いてあった。どうしても危なかったら戻ろうということで先に進んでみる。岩のある場所は岩を掴み、平な場所では姿勢を低くして風上側を歩く。
 なんとか地殻変動調査の反射鏡と思われるものが設置されている場所に辿り着いたが、そこから径が無くなる。2カ所ある反射鏡の先は崖。覘いてみたが下が見えない。ロープを出して宙ぶらりんになったら、この霧と風の中で発見してもらえず凍死してしまうだろう。普通の登山道なのだからロープが必要なわけもない。しばらく経路を捜索したが径が見つからず、あきらめて登り返そうと振り返ったら、なんと右下に経路があるではないか。
 そんなことでようやく登山道に復帰した。しかし、視界の無い中、どちらに向かったらいいのか全く判らない。丁度通りかかった方に久住山への道を聞くと、左手を指してくれた。よく見れば、数メートルおきの岩に黄色いスプレーでマーキングしてある。この先もこのマーキングにずいぶん助けられた。
 九重別れの避難小屋では団体登山のグループが別行動のグループと携帯電話で連絡中。濃い霧のため撤退する様だ。その脇を通って久住別れに進み、コンパスを頼りに久住山に向かう。コンパスとは若干方位が違うがマーキングを頼りに進んで行く。しかし、先の見えない濃い霧の中で風下が崖になっている吹きさらしの尾根を登るのは非常に危険で恐怖心が高まってくる。更に天候は悪化する一方だ。2度ほどあおられて転んだところで撤退を決意した。残念だが、法華院温泉への最短距離である北千里浜を下ることにする。
 北千里浜も霧で見通しがきかないが、マーキングとケルンがしっかりしているので道に迷うことがない。なんとか法華院温泉にたどり着いたのが13時前。ちょっと早めのチェックインをお願いし、千手観音様にもお参りし、ゆっくり温泉に浸かった。16時頃から雨が降り始める。暴風の上に豪雨だ。おまけに雷まで鳴り始める。早く下りてきて良かった。談話室で自炊をしながら反省。明日は予定を変更して、今日予定していたルートを逆走してリベンジを図ることにした。


星生山からの下りは岩稜が続く


主なルートには黄色のマーキングがある


ようやく法華院温泉が見えてきた


法華院山荘です


ご本尊の千手観音様


気持ちの良い温泉
でも少しぬるいかも・・・




20100321



法華院温泉0528…0550鉾立峠…0640白口岳…0707稲星山…0737中岳…0750天狗ヶ城…0823久住山…0845久住別れ避難小屋0900…北千里浜…0936諏蛾守越…1036長者原

 自炊なので朝は自由に出発できる。4時起床。まずは温泉に浸かる。少しぬるいのでなかなか身体が温まらない。注ぎ口に太ももの内側をあてて出来るだけ効率よく熱を吸収できる様にする。4時半から談話室で自炊。5時半前にヘッドランプをつけて出発。
 夕方から降った雨は未明には止んだ様だ。風は北よりの風に変わり相変わらず強いので、気温が著しく低く感じられる。
 鉾立峠までの径は真っ暗な中を進む。途中、背の低い獣の眼が反射する。ドキッ。物音に驚いた小鳥が飛び立つ。鳥目なのかなかなか枝に着地できず、しばらくバタバタと空中でもがいていた。
 鉾立峠でヘッドランプを外す。白口岳手前で日の出を迎える。尾根筋も相変わらず風が強い。時々飛ばされそうになりあわてて腰をかがめる。少し霧が出ているが見上げる空は快晴。気温のせいか風のせいか、岩からは氷柱が下がり地面には霜柱が成長している。当然ながら水たまりには氷がはっている。白口岳頂上から、少し霞んではいるが、ようやく九重の全貌を見渡すことが出来た。


白口岳に登る途中には氷柱が下がっている


白口岳頂上


白口岳からの九重の展望

 一旦下り稲星山を目指す。はげ山だ。風を遮るものはないが、なだらかな広い尾根なので心配することはない。稲星山頂上で一回吹き飛ばされようやく頂上の写真を撮って中岳に向かう。稲星山から中岳までの鞍部は風の流れが丁度じょうごの口の様にすぼまり風速が一気に増す。意識的に身体を傾け風上に向かって進もうとしないと自分の思った方向には進めない。呼吸も巧く出来ない。登り返して中岳中腹で岩の影になり、ようやく一息つくことが出来た。視界の全くない中岳頂上を過ぎ、鞍部らしきものが近くなるといきなり目の前に大きな湖が現れた。御池だ。その奥には1段低くなって空池がある。すぐ隣り合っているのに一方に水が溜まり、他方は空。不思議だ。その先の天狗ヶ城はそびえ立つ岩峰。どうやって登るのかと近づくとしっかり巻ながら登るルートがあった。
 天狗ヶ城から下り、空池の淵を辿りながら、今度は久住山を目指す。このあたりからチラホラと登山者を見かける様になり、少しほっとする。久住山の頂上もものすごい風。でも眺めはよい。更に一等三角点とはうれしくなる。一等三角点「久住山」1,786.50m。昨日見えなかった星生山や硫黄山もしっかりの眺めることが出来た。


はげ坊主の稲星山頂上


イワカガミとコケモモが群生している


中岳頂上


中岳には三角点はなく鋲が打ってある
でも九州本土最高峰


中岳鞍部から御池と空池を望む
右奥は久住山


鞍部から天狗ヶ城に登り返す


久住山へは緩やかな登りだが
尾根筋だけに風が強い


ようやく久住山に登頂!


久住山は一等三角点
「久住山」1,786.50m


久住山から九重のパノラマ

 とりあえずこれでメインの山は登った。九重別れの避難小屋で休憩しながら今後の予定を考える。牧ノ戸峠に行くのもいいが、昨日見た北千里浜の雄大な姿と見られなかった硫黄山を近くでしっかり見たいと思い、諏蛾守越から長者原に下ることにした。
 北千里浜も昨日とは打って変わって見晴らしが効くため歩いていて楽しい。下りきったところで、硫黄山の湯煙を被りながら、その姿をじっくりと楽しませてもらう。諏蛾守越には山小屋跡の石室がある。入口の鐘を鳴らせていただく。
 反対側に下り舗装された林道に出て山を振り返ると見事な湯煙が涌いている。北千里浜から見ていたのはこの煙だったのだ。あまりの雄大さにしばらく見ほれる。


北千里浜から硫黄山を見上げる


諏蛾守越の石室


硫黄山の見事な水蒸気の煙

 長者原に着いたのは10時半過ぎ。12時50分の九州横断バスまでにはずいぶん時間がある。食堂2階の温泉(350円)にゆっくり浸かって山の汗を流し、1階で団子汁鳥天定食を頂く。団子汁と言っても丸い団子ではなく、小麦粉を薄くのばして切ったもの(ほうとうの幅を広げて長さを短くした感じ)だ。野菜やキノコも入った具だくさんでとても美味しい。また、一緒に付いてきたタレを何に使うのか判らずお店の方に伺ったところ、鳥天を浸して食べるそうだ。これもまた美味しい。とても量が多く美味しくて大満足。このあと、ラムサール条約の地であるタデ原を散歩し、ビジターセンターで少し勉強してから、バス停に向かった。


長者原を見下ろす


長者原の温泉
350円でした


団子汁ととり天の定食


タデ原から三俣山を望む

 バス停で待つがバスが来ない。10分20分...45分たってようやく到着。このバスは休祭日、特に今日の様な連休の半ばなどには遅れるのが当たり前の様だ。それなら予約の時に教えてくれればいいのにと、ちょっとご立腹。予定している飛行機には間に合うか間に合わないかぎりぎりのところ。このあと湯布院でも混雑が見込まれると言うことでバスの中でヤキモキ。 案の定、湯布院手前で渋滞につっこみ、バスの中から携帯で飛行機の予約変更。これで約2時間の余裕が出来た。
 予定では、別府観光港で大分空港行きの路線バスに乗り換えるつもりだったが、15時前に湯布院バスターミナルに着いたとき、バス案内所入口に湯布院始発大分空港行直通バスの案内があった。16時15分発大分空港17時15分着。これなら余裕の行動が出来る。ということで、途中下車して、ここで直通バスに乗り換えることにした。
 約1時間の待ち時間。駅の観光案内所でパンフレットを頂き、プチ散策。実は、湯布院の名物は温泉と由布岳しかない。しかしなぜ若い女性に人気があるかと言えば、それはここにある土産物屋などの商業施設だ。よく見れば別にわざわざここに来て買ったり見たり食べたりしなくてもいいものばかり。それでも、若い女性の心をくすぐるこのような施設が街の中に集中すると、それはそれで集客力が増すのだろう。あえて言えば、プチ軽井沢、プチ原宿と言ったところだ。従っておじさんたちにとっては温泉以外は決して魅力ある街ではない
 それでも、大混雑の観光客をかき分け、町はずれの金鱗湖まで行ってみると、観光客のいない反対側には混浴の露天温泉がある。すぐそばには住民専用の温泉場もある。本当はこういうところを楽しむのが、ひなびた湯布院の温泉の楽しみ方なのだろうなあと一人納得した。

由布院駅からは正面に由布岳が見える


メインストリートは大混雑


河原から由布岳を望む
春です


金鱗湖から由布岳を望みたいのだが、
微かにしか見えない
右端に混浴温泉の下ん湯

 湯布院からのバスは定刻に出発し定刻に大分空港に到着。少しほっとした。しかし、飛行機の方は、関東にまだ居座っている強風のため羽田での発着便が混雑しているので約10分遅れで出発。最後までヤキモキさせてくれた。


 
 今回は念願の九重縦走を行うことが出来た。コンパクトな山容の中に見所いっぱいで、とても楽しめた。距離感は、丹沢で言えばヤビツ峠から大倉までの縦走という感じだ。実は、九重の魅力は6月のミヤマキリシマが咲く頃だという。出来れば機会を作って、その頃にもう一度行ってみたい。ただし大混雑の様なので、テント泊で行くことになるのだろうなあ。
 それと、今回のルートは太平洋と東シナ海を分ける九州の分水嶺となっている。ルートを確認してみたが、見た目にはなだらかな尾根の様だが、あちこちに火山特有の表土がはげた崖状の露岩があり実際の道程は険しそうだ。何年後に行くことになるか判らないが心してかかる必要があるだろう。