2009年3月21日〜22日
三国峠〜石仏
中央分水嶺@
![]() クリックすると別画面で1/12500図を表示します |
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みろく山の会の会山行で分水嶺を歩くことになり、私も参加することにした。 今回はその第1回。参加者は9名。 まずは、埼玉、群馬、長野の3県の境界が交わる三国山から西に向かうことになる。 とりあえず序章として三国峠から三国山まで北上するのだが、西が長野県で日本海側の信濃川に流れ、東が埼玉県で太平洋側の荒川に流れ込む。 三国山から西に向かうと、南が日本海側の信濃川、北が群馬県で太平洋側の利根川に流れ込むことになり、ちょっと不思議な気分 集合場所は小淵沢駅に6時なので、前日22時過ぎの高尾発小淵沢行きに乗車し、小淵沢駅の待合室で仮眠をとる。 翌日始発の小海線小諸行きに乗車し信濃川上駅で下車。ここで乗用車組と合流し、いよいよ出発! 今回はリーダーのMさんのとても素晴らしい記録文がありますのでこれを引用させていただき私の記録に代えます。 では、ここから始まります。 初日は、文句のつけようがない快晴、暖かく、風も弱い。 翌日は、厚くはないが朝から低空に雲。 午前中から時折、水滴が舞うようなこともあったが、薄日が差すこともあり、雨具を使うことはなかった。 昼頃には西風が強くなる。 林道を降り、タクシーに乗って走り始めたら、とたんに雨が降ってきた。 正に、今回のメンバーの普段の行いが良いことを証明するような天気でした。 当日の天気図を確認してみると、22日12時には能登半島の北東に990の低気圧、15時には紀伊半島の先に副低気圧が発生して、二つ玉低気圧になっています。 アメダスのデータでは、八ヶ岳の西側では朝から雨、それに対して東側は八ヶ岳にブロックされて夕方まで強い雨は降っていません。 その後、太平洋側の低気圧が、関東地方の夕方の強風を引き起こして電車のダイヤを乱し、二つ玉低気圧が通り過ぎた後の強い冬型の気圧配置が今朝の成田の事故の原因になりました。 予想よりも北側の低気圧の動きが遅く、八ヶ岳周辺が二つの低気圧の間の弱風域だったことが我々の味方をしてくれたようです。 春の天気は、気をつけないといけませんね。 3/21 7:10 信濃川上からジャンボタクシーに乗り三国峠に向かう。 この季節、積雪があるのが普通なのだが、今年は雪がない。 峠の手前で、2,3ヵ所積雪があっただけだった。 7:45 三国峠に到着。雲ひとつない快晴。西には八ヶ岳がくっきりと見える。 埼玉県側に続く道には、土が積み上げられて冬期通行止めになっている。 今は、このバリケードの上が分水嶺だ。上に登って中央分水嶺踏破スタートの記念写真を撮る。 8:05 埼玉県側にあるトイレの横から登山道に入る。すぐに分水嶺の尾根に乗る。 |
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![]() 三国峠 長野県側の看板 |
![]() 三国峠 埼玉県側の看板 |
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![]() 最初の分水嶺に立つ (林道を塞ぐ土砂の上) |
![]() 目の前の埼玉県側トイレの脇から 分水嶺の尾根に取り付く |
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8:29-38 三国山山頂。北東に延びる尾根を確認する。この尾根が埼玉県と群馬県の県境になっており、埼玉県側は荒川の源流、群馬側は利根川の源流になる。 これから数年の間は、福島、栃木県境で那珂川にバトンタッチするまで広大な流域を持つ利根川の源流部に沿って歩くことになる。 長野県側は信濃川。これまた、巻機山の先まで長い付き合いになる。 ここから先は、昭文社の地図での登山道はなくなるが、しっかり踏まれた登山道が続いている。 |
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![]() 最初はなだらかな尾根 |
![]() いきなり目の前に岩壁が現れる |
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![]() 手元足元を確認しながら岩を登る |
![]() 三国山に到着 |
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8:54 1818通過。 9:20-27 1764先の小鞍部で休憩。 この先の登りで、ようやく笹ヤブの雰囲気が出てくる。 10:32-48 蟻ヶ峰=神立山=ショナミノ頭=高天原山 名前が沢山ありすぎて、結局、ひとつも覚えられない山。 南に甲斐駒、北岳がきれいに見える。八ヶ岳の左には、中央アルプスの山々がよく見えている。 ここから北西の尾根を、地図とコンパスでしっかりと確認して下る。 なんどかルートを間違えそうになるが、全員で、地図、コンパスで地形を確認し、GPSの助けも借りながら、すぐに修正しながら歩いて行く。北斜面では30cmほどの積雪があるところもある。 |
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![]() 所々に大きな岩が現れる |
![]() ルンルンの尾根 |
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![]() 蟻ヶ峰に到着 |
![]() 蟻ヶ峰の三角点 (二等三角点 蟻ヶ峠 1978.57m) |
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![]() 八ヶ岳を望む |
![]() 南アルプスを望む |
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11:45-12:03 1922手前で昼食休憩。日差しが暖かく、とても気持ちが良い。 「日航機事故 昇魂碑へ」と書かれたプレートがあった。 このあたりの尾根には、根元の黒く焼けた切り株が何箇所かにあった。 もしかすると、事故機の破片が飛び散って燃えた跡なのかもしれない。 実際には、蟻ヶ峰の手前のピークから北に延びる尾根に尾翼を当てた後、スゲノ沢を越えて、大蛇倉山の手前1922から東北に延びる尾根に墜落している。 標高は1600m程度。分水嶺の尾根まで破片が飛んだとすれば、相当に衝撃が強かったのだろう。 12:25-13:20 大蛇倉山山頂。なんとも物騒な名前の山だ。 この山からは沢山の尾根が出ているが、ここから行きたいのは、北に延びる尾根。 ブロードな尾根で、斜度は最もきつい。ここまでは、何らかの踏み跡が続いてきたのだが、この尾根には、どう探しても道がない。 西に続く尾根から回り込むのも危険そうだ。あちこちと偵察をしたのち、狙いの尾根をまっすぐ下りることにする。偵察をしたTさんの判断で、アイゼンを付け、ピッケルはザックにしまうことにする。 そして30mロープを持って、ZAPさんに先頭を行ってもらう。 尾根はシャクナゲが生い茂った急斜面。両手でシャクナゲにつかまり、雪が薄く凍りついている斜面にアイゼンを食いこませて、慎重に下る。 最後の10mほどは、ロープを出して下る。アイゼンを履く判断も、ロープを出すタイミングも完ぺきだった。 ここが今回の山行のハイライト。ある程度の自信を持てた場面でもあった。 |
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![]() 御巣鷹の尾根への案内板 |
![]() 大蛇倉山に到着 |
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![]() 大蛇倉山突端の岩場 |
![]() 岩場の立ち枯れた枝にも山名板有り |
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![]() 大蛇倉山からの急坂をロープで下る |
![]() シャクナゲの藪はしぶとい |
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13:46-56 尾根を下った肩のピークでアイゼンを外す。降りてきた尾根を見上げると、垂直の壁のように見える。よく、あんな所を下ってきたものだ。 ここからは、シャクナゲの密藪がつづく。しなりの強い枝の間をこじ開けたり、倒木の下を這ってくぐったり忙しい。 鞍部を過ぎて登っていくと、幕営適地もあったが、明日のために、15:00までは前に進もうと先に進む。 14:48 御巣鷹山分岐の舟留に到着。もう少し、先に進もうとも思ったが、腰をおろしたメンバーのお尻には、すでに根が生えているようだ。 ここで、記念撮影、ストレッチをし、テント2張り、ツェルト2張りを設営して、おいしい夕食&ドリンクタイムとなる。 |
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![]() 尾根には焼け落ちた倒木が数カ所 |
![]() 舟留に到着 |
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3/22 日中は日差しで暖かかったが、夜はさすがに冷える。 周りの木々の音は風が強いことを教えていたが、天幕が風で揺れるようなことはなかった。 4:00 起床。朝食。予定通り5:30には、ほとんどのメンバーが出発の準備が出来ていたが、ヘッドライトなしで足元の不安がなくなる程度に明るくなるまで、15分ほど待つ。 5:48 出発。少し歩いた後、アイゼンをはく。このあたりからは、深い笹薮で800m進むのに2時間という情報もあったので、心してとりかかるが、周りの笹は、枯れていて苦もなく歩ける。しかも、だいぶ歩かれているようだ。 6:25 1766の手前では、尾根を間違えそうになるが、すぐに修正する。 このあたりの地下には、水路が通っている。今回の山行で、ずっと左側に見えていた南相木ダム(奥三川湖)と、長野県側にある上野ダム湖(奥上流湖)を結ぶ水路である。実は、南相木ダムが上部ダム、上野ダムが下部ダムとなり、揚力発電をしている。夜間の余剰電力で、上野ダムの水を南相木ダムに汲み上げて、昼間の電力需要時に、南相木ダムから水を落とすことによって発電をしているのである。 つまり、本来、分水嶺の日本海側に降った雨は、南相木ダムを経て、信濃川に流れるはずなのであるが、南相木ダムに入った水は、地下水路をとおって、上野ダムに入り、最終的には利根川から太平洋に注いでしまうのである。今回は、南相木ダムの上流部をぐるりと歩いたのだが、実は、尾根のどちらに降った雨も、太平洋に行ってしまう。こんな反則技があったとは。今度は、南相木ダムのロックフィルの堰堤上を歩かないといけない。か、 まあ、人間のした小さないたずらは無視して、数千万年もの歴史で作られた造形に 従って、歩くことにしよう。 7:36 1847を通過。ここの下りもはっきりとした尾根に引きずり込まれそうになったが、すぐに修正。このあたりは、かなり歩かれているようで、踏み跡も多く、笹が刈り払われているところもある。ただ、枝道が多いので、安易に踏み跡について行くと、別なところに行ってしまう。やはり、ある程度のヤブこぎが断続的に表れる。 8:45-9:00 廃道になった峠道の手前の小ピーク。 テント泊の荷物を背負ってのヤブこぎは重労働だ。 昨日からの疲れが蓄積してくる。ペースが落ち、休憩の頻度もあがる。 |
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![]() 舟留の先は広い尾根 |
![]() ダムを結ぶ通水管がこの下にある 皆で上三川ダムを眺める |
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![]() 1847mのピーク |
![]() 1847m直下で西に延びる尾根に引きずり込まれ 上り返して途中で東にトラバース |
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![]() 1754m手前のピークでもこの岩に騙され 西に向かってしまう |
![]() ヘロヘロになって進むが雪の上は楽しい 石仏が見えてきた |
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10:25-45 ようやく2日目の最高地点、石仏に到着。みんなの顔に達成感が広がる。 ゆっくりと歩いてきたが、おもっていたよりはヤブが厳しくなかったので予定していた時間よりもだいぶ早い。タクシ会社に電話をして予約の時間を1時間早める。頂上には、MHC 県境歩き隊のプレートがかかっていました。 調べてみると、昨年11月に設置されたもののようだ。 http://yamaga1ban.xxv.jp/2008-1115kenkyou37funadome/2008-1115kenkyou37funadome.html 物好きは、我々以外にもたくさんいるらしい。 ここからのくだりは、雪の斜面。ぼんやりとしたピークをルートファインディングする技術も、この2日間でずいぶん上達した。 |
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![]() 石仏に到着 |
![]() 石仏の標識 |
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![]() 石仏の三角点 (三等三角点 会所 1915.84m) |
![]() 石仏から今ままで歩いた道程を振り返る |
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11:46 林道に降りられる地点まで来たはずだが、林道が見当たらない。 事前の情報収集では、すぐに左手に林道が見えるだろうと思っていたのだがまわりに見えるのは藪ばかりで林道は影も形も見えない。 このような目標物のない薮の中では地図読みで方向を定めるのは不可能だ。 林道地点まで、南に80mと示すGPSを信じて、ヤブに分け入る。 5mも離れると前の人がどこにいるのかわからなくなる。メンバーが一体として動けるように前後で声を出しながら、薮を漕ぐ。 後ろから、目標まで南に20mとコールしたころ、先頭から林道が見えたとの声が返ってきた。やはり、GPSは強力なツールである。 12:01-12:16 林道終点でアイゼン、ピッケルをしまう。次回のために、周囲を調査。 林道の先は、沢筋につながっている。これを辿って行けば、会社平に登れそうであるが、分水嶺を歩くという趣旨からすると、次回も薮を抜けて尾根に取り付くしかなさそうだ。 |
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![]() 石仏からの下りは深い雪の斜面 |
![]() 深い藪にルートを見失う しかし、鹿の足跡はしっかり右側を巻いて続いていた |
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![]() 白い雪にオレンジのダケカンバが映える |
![]() 藪を突き抜け林道に出た この間はコンパスだけが頼りだった |
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11:29 林道の終点にあると思っていた営林署の小屋は、別の林道との合流地点にあった。 比較的新しいプレハブの小屋が2棟ある。 13:26 最後のエネルギーを振り絞って、長い長い林道歩き。 一平沢の出会いの少し下流にゲートがある。 次回は、ここまでタクシーに入ってもらえそうだ。 13:54 上栗生のバス停でタクシーに乗る。予約した時刻に9分遅れ。 14:18 小海駅到着。酒屋は徒歩3分。 |
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![]() 林道途中の凍結した滝 |
![]() 林道途中のそそり立つ岩場 |
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![]() おまけは小梅線のJR最高地点 |
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ということで、リーダーの記録を引用させていただきました。 写真は私の撮影したものです。 引用ばかりで手抜きなのですが、 私が、山行後にメンバーの皆さんにお送りしたメールを最後に添付します。 先頭を進ませていただき、ありがとうございました。 大変だと、慰めと励ましのお声をかけていただきましたが、 本当は、先頭を歩かせていただいて本当にうれしかったのです。 未知のルートをいろいろ考えながら進む気持ちは何にも代え難い快感です。 まあ、体力が続けばの話ですが・・・ こんなにおもしろい作業を独り占めするのは申し訳ないので、 次回以降は交代で担当するのもいいかもしれませんね。 無理は禁物ですが、ルートファインディングの楽しみを 皆に味わってもらいたいものです。 今回のルートは、刈ってあった部分を除き、 鹿の歩く獣道を追って行ったのですが、 微かなヤブの切れ目を見失ったときは 踏まれて固まった雪と鹿の落とし物の列を目印に進んだ気がします。 当然コンパスも確認しているのですが、 ルートがしっかりしているように見えるところで ついコンパスを確認しないときに限って道を間違えるんだよなあ・・・ やっぱり難しいのは下りと屈曲点ですね。 今後も勉強して行きましょう。 一人では間違えそうな尾根も、 皆で意見を出し合い検討して進んで行くという作業で、 『みんなで歩いている!』という一体感が感じられ、 とても楽しかったです。 まとまらないときに、最後にチーフリーダーの、 『では、こうしましょう!』の一言が とても頼もしくうれしかったです。 ありがとうございました。 |
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